Fancy Pants

ベイシーの晩年はまさに最後の力を振り絞るようにして電動車椅子でステージに上り、世界中に惜しまれつつ1984年4月26日に亡くなります。このアルバムは、死のわずか5か月ほど前に録音された、遺作となった一枚。

収録された楽曲は、ベイシーの70年代以降の快進撃を支えた Sammy Nestico の作曲／アレンジによるもの。遺作なだけに、往年の指一本でバンドをドライブさせるような圧倒的な存在感は影をひそめていますが、それでもBy My Sideなどの得意のミディアムナンバーでは音数少ないながらも心に残るソロを聴かせてくれますし、Put It Right Here のイントロではベイシーの提示したテンポにリズム隊が瞬時に反応するあたり、ベイシーは最期まで「リズムの魔術師」であり続けたのだとまざまざと感じさせられます。アルバム最後を飾る Strike Up The Band は Nestico の秀逸なアレンジもさる事ながら、思うようにピアノを弾けないベイシーを支えるかのように張り切るバンドが最大の聴きモノです。

偉大なるバンドリーダー、カウント・ベイシーの遺作、涙なくしては聴けません。必聴です。