Prime Time


1. Prime Time
2. Bundle O'Funk
3. Sweet Georgia Brown
4. Feather Weight
5. Reachin' Out
6. Ja-Da
7. The Great Debate
8. Ya Gotta Try

Personnel : Count Basie (p), Freddie Green (gt), John Duke (b), Butch Miles (dr), Lyn Biviano, Pete Minger, Sonny Cohn, Bobby Mitchell (tp), Al Grey, Mel Wanzo, Curtis Fuller (tb), Bill Hughes (btb), Bobby Plater, Danny Turner (as), Eric Dixon, Jimmy Forrest (ts), Charlie Fowlkes (bs), Reinie Press (el-b on 2), Nat Pierce (p on 8)

Location & Date : San West Studio, LA, Jan 18-20, 1977

1976年8月、カリフォルニア州アナハイムのディズニーランドに出演中だったベイシーは心臓の疾患による胸の痛みを訴え、そのまま入院してしまいました。バンドは長年ベイシーのサブピアニストであった Nat Pierce をベイシー不在の間の臨時リーダーに据え(公演によっては Joe Williams (vo)、Clark Terry (tp) もリーダーを務めたようです。)、ツアーを継続しました。結局ベイシーの復帰は年明けの1977年1月6日を待たねばならず(恐ろしく早いと思いますが)、その間バンド、とりわけ Nat Pierce は大変だったのではないでしょうか。なにしろベイシーを聴きにきたお客さんの前で“あの”カウント・ベイシーの代打を務めなければいけなかったのですから。素人には想像もできないプレッシャーであったろうと思います。

 リーダーの復帰からほとんど間をおかずに行われた本アルバムの録音では、自分が不在の間、代打を務めたサブピアニストに対してベイシーは1曲代わりに弾くことを許し、なおかつレコードのクレジットにも記載するというかたちで感謝の意を表します。なんとも美談ですねぇ。そんな話を知ってか知らずか、Nat Pierce がピアノを弾いた Ya Gotta Try はよく日本のアマチュアバンドが好んで演奏しています。 ただ、Chris Sheridan 作の大著、Count Basie A Bio-Discography によるとスタジオ録音でベイシーがサブピアニストに弾かせるということは結構あったらしく、アルバムジャケットの記載にはありませんが、Warm Breeze に収録されている Satin Doll はベイシーの死後にバンドのピアニストを務める Tee Carson(アルバム、Way Out Basie に収録された "And That's That" のあのヒトです。 )がピアノを弾いているそうです。

 Ya Gotta Try の美談の陰に隠れがちですが、その他の曲もなかなか興味深い曲が並んでいます。ライブの定番になる Sweet Georgia Brown、Ja-Da、心地よいミディアムテンポの Reachin' Out、Prime Time、そして極めつけはベイシーご乱心かと一瞬耳を疑う Bandle 'O Funk!!いかにもなファンクビートに聴き慣れないエレクトリックベースが絡み、Freddie Green がギターをシェイカーに持ち替えて本業並みに堅実なビートを刻む!!なんとも場違いな印象が否めませんが、ファンクビートの曲自体は Live In Japan '78 で聴ける Left Hand Corner ( Left Hand Funk ) が '75年頃から結構頻繁に演奏されており、'76年の来日公演でも演奏されています。ライブではメンバーのフィーチャー曲と同じ感覚でファンクコーナーが設けられていたのかもしれませんね。

 なおこのアルバムは1977年の第20回グラミー賞( Best Jazz Performance By A Big Band )を受賞しており、一曲一曲の演奏のクオリティも非常に高いとは思うのですが、アルバム全体の印象としては前々作 Basie Big Band に劣ってしまいます。やはりライブで採り上げられた曲数の差でしょうか・・・?