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1976年8月、カリフォルニア州アナハイムのディズニーランドに出演中だったベイシーは心臓の疾患による胸の痛みを訴え、そのまま入院してしまいました。バンドは長年ベイシーのサブピアニストであった Nat Pierce をベイシー不在の間の臨時リーダーに据え(公演によっては Joe Williams (vo)、Clark Terry (tp) もリーダーを務めたようです。)、ツアーを継続しました。結局ベイシーの復帰は年明けの1977年1月6日を待たねばならず(恐ろしく早いと思いますが)、その間バンド、とりわけ Nat Pierce は大変だったのではないでしょうか。なにしろベイシーを聴きにきたお客さんの前で“あの”カウント・ベイシーの代打を務めなければいけなかったのですから。素人には想像もできないプレッシャーであったろうと思います。 リーダーの復帰からほとんど間をおかずに行われた本アルバムの録音では、自分が不在の間、代打を務めたサブピアニストに対してベイシーは1曲代わりに弾くことを許し、なおかつレコードのクレジットにも記載するというかたちで感謝の意を表します。なんとも美談ですねぇ。そんな話を知ってか知らずか、Nat Pierce がピアノを弾いた Ya Gotta Try はよく日本のアマチュアバンドが好んで演奏しています。 ただ、Chris Sheridan 作の大著、Count Basie A Bio-Discography によるとスタジオ録音でベイシーがサブピアニストに弾かせるということは結構あったらしく、アルバムジャケットの記載にはありませんが、Warm Breeze に収録されている Satin Doll はベイシーの死後にバンドのピアニストを務める Tee Carson(アルバム、Way Out Basie に収録された "And That's That" のあのヒトです。 )がピアノを弾いているそうです。 Ya Gotta Try の美談の陰に隠れがちですが、その他の曲もなかなか興味深い曲が並んでいます。ライブの定番になる Sweet Georgia Brown、Ja-Da、心地よいミディアムテンポの Reachin' Out、Prime Time、そして極めつけはベイシーご乱心かと一瞬耳を疑う Bandle 'O Funk!!いかにもなファンクビートに聴き慣れないエレクトリックベースが絡み、Freddie Green がギターをシェイカーに持ち替えて本業並みに堅実なビートを刻む!!なんとも場違いな印象が否めませんが、ファンクビートの曲自体は Live In Japan '78 で聴ける Left Hand Corner ( Left Hand Funk ) が '75年頃から結構頻繁に演奏されており、'76年の来日公演でも演奏されています。ライブではメンバーのフィーチャー曲と同じ感覚でファンクコーナーが設けられていたのかもしれませんね。 なおこのアルバムは1977年の第20回グラミー賞( Best Jazz Performance By A Big Band )を受賞しており、一曲一曲の演奏のクオリティも非常に高いとは思うのですが、アルバム全体の印象としては前々作 Basie Big Band に劣ってしまいます。やはりライブで採り上げられた曲数の差でしょうか・・・? |