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第二次大戦後の不況とビバップの台頭などの理由により、ベイシーも優秀なメンバーを多数抱えるビッグバンドを維持していくのが困難となり、1950年に一時バンドを解散・縮小せざるを得なくなってしまいました。しかし翌'51年には新しいバンドの取っ掛かりとなるビッグバンドでの録音を行い、さらに翌'52年には正式に自身のビッグバンドで復活を遂げます。一般的には解散前のビッグバンドはオールド・ベイシー、再編成後のバンドはニュー・ベイシーと呼ばれています。 本作はそんなオールドベイシーとニューベイシーの狭間、ベイシーがビッグバンドではなく、スモールコンボで活動していた時期の貴重な録音のコンピレーション。曲目でまず目を引くのは One O'clock Jump や Jumpin' At The Woodside など、オールドベイシー期からのおなじみの曲にまぎれて Donna Lee や Ornithology などのビバップナンバーが並んでいること。ビバップ旋風吹き荒れる中でのベイシーの試行錯誤の跡が見て取れます。しかし演奏自体は完全にベイシースタイルそのもの。その多くはリズム職人、Freddie Green の刻むギターによるものと思われますが、どんなに複雑なテーマを演奏していても、バックでゴンゴンと4分音符を刻み続ける彼がいるだけで、ビバップの名曲も一瞬で紛うことなきベイシーチューンになるあたり、彼が『ベイシー楽団の至宝』といわれ続けた理由がわかる気がします。まさにワンアンドオンリーの恐るべき個性!! 新しいスタイルとのせめぎ合いのなかで生き残れるかどうかの瀬戸際での演奏なので、順風満帆なビッグバンドの合間の気分転換(?)的なセッションである Kansas City 7 で聴けるようなゆったりと寛いだ雰囲気とは少々かけ離れており、音質も鑑賞に堪えうるギリギリのものではありますが、オールドベイシー期からニューベイシー期への変遷の過程をとらえるには欠かせない録音だと思います。 ちなみに1〜5曲目は Swingtime Video Vol.2 と同音源(+α)。かつてバンドに在籍した Billy Holliday (vo) との共演(6、7)もどうやら映像が残されているようで、公式なソフトとしての発表が待たれるところです。 |