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1984年4月26日にベイシーは亡くなりますが、死のおよそ10ヶ月前に収録されたベイシーのスモールコンボ録音としては遺作となったアルバム(ビッグバンド作品としての遺作は Fancy Pants (1983年12月 録音))。 脇を固めるメンバーは、'50年代初頭〜'70年代、間に何年かの中断期間はあるもののベイシーバンドのメインソロイストであり続けた Eddie 'Lockjaw' Davis (ts)、Pablo レーベルで自身のソロ作やヴォーカリストのバッキングなど、八面六臂の活躍をみせ、ベイシーのコンボ作品でもお馴染みのヴァーチュオーソ、Joe Pass (e-gt) と、贅沢な顔ぶれが並んでいますが、なんとも珍しいのは第二の黄金期を築いたアトミックバンド時代('57〜'62年)の立役者の一人である名リードトランぺッター、Snooky Young の参加でしょう。彼の参加のおかげで本アルバムが、数ある Pablo でのベイシーのコンボ作品の中でも一頭地を抜く作品に仕上がっている気がします。また、ベイシーの50年近い相棒、Freddie Green (gt) の参加も見逃せません。Pablo レーベルのオーナーでありプロデューサー、Norman Granz はコンボ作品ではテンポを厳しく守らせる Freddie をあまり使いたがらなかったようですが、'80年代に入ってからはずっと体調が優れなかったといわれるベイシーを思いやって気心知れた彼をメンバーに加えたのかも知れませんね。 曲目は、アルバムタイトルが示すように8曲のうち5曲をブルースが占め、3曲はお馴染みのスタンダードという構成になっています。主役であるはずのベイシーは随所に光るバッキングを聴かせてはくれるものの体調の悪さを反映してか、演奏全体も元気がありません。突飛なことは何一つやっていない、いつもながらのくつろいだセッションですが、やはり Snooky Young がメロディーをとる I'll Always Be In Love With You や I Want A Little Girl は思わず聴き入ってしまいます。I Want A Little Girl についてはこの録音のおよそ20年前、Inpulse レーベルに録音された Kansas City 7 にも収録されています。そちらのメロディは Thad Jones (tp) がとっているのですが、同じ黄金期のトランペットセクションを担ったリードトランぺッターと 2nd トランぺッターが同じ曲を吹いてこうも違うのか、と愕然とするくらいに切り口が異なっています。ベストトラックは Snooky Young のソロが光る I'll Always Be In Love With You と Joe Pass の美しいメロディに思わず聴き入ってしまう I'm Confessin' ( That I Love You ) 。でも、本当に素晴らしいのは一曲一曲よりもアルバム全体に溢れる日だまりでうたた寝しているような心地良さ。おすすめです。 |