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'68年にアレンジャー、Sammy Nestico と組んだ起死回生のアルバム、Basie-Straight Ahead を発表したものの、長年リードアルト、コンサートマスターを務めた Marshal Royal が脱退したり、所属レコード会社を転々としていたりでイマイチ波に乗り切れなかった感のあるベイシー。そんな時代の未発表音源がベイシー生誕100周年に合わせるように登場!! 定番の Hittin' 12 から始まって、公式盤ではおそらく初お目見えの Frankie And Johnnie、湿っぽくなりがちな曲を猛スピードのリズムの中を Eddie 'Lockjaw' Davis (ts) のソロが縦横無尽に駆け抜ける意外なアレンジの Summertime、'50年代はベイシーのフィーチャーナンバーだったのを Harry 'Sweets' Edison (tp) のロングソロに置き換えた Cherry Point・・・と冒頭の数曲だけでも聴く価値十分です。きっちり One O'clock Jump + Jumpin' At The Woodside (Enc) で終わっているのも嬉しいところ。また話題にのぼることは少ないですが、Basie (p)、Freddie Green (gt)、Norman Keenan (b)、Harold Jones (dr) のリズムセクションの堅実さはベイシー楽団の長い歴史の中でもかなり上位に食い込むのではないかと思います。 ちょっと残念なのは60年代末には Oscar Brasher (tp)、70年代には Weymon Reed (tp) のフィーチャー曲として好評を博す A Night In Tunisia。ここではベテランの Harry 'Sweets' Edison (tp) がソロをとっていますが、アレンジが覚えきれていないのか、そもそも性に合わないのか、どうもちぐはぐな印象が拭えません。全体的に音のバランスが悪いのも残念なところではあります。 個人的に興味があるのは舞台となったハンガリーのブダペスト。冷戦時代まっただ中、ワルシャワ条約機構加盟国であるハンガリーで、敵対するNATOの盟主であるアメリカの、豊かさの象徴みたいなビッグバンドのライブとは・・・。アンコールを求める拍手の熱烈さを聴けばわかる通り、ベイシーの音楽は資本主義か共産主義かの違いなんて全く関係ないみたいです。それにしても、One O'clock Jump 曲中に入るベイシーのお決まりの挨拶にハンガリー語通訳がつくのには思わず苦笑してしまいます。 ちなみにアルバムタイトルにもなっている10曲目は Ernie Wilkins のアレンジはかけらも出てこないヘッドアレンジのブルース。(強いて曲名を挙げるなら Basie Boogie あたりでしょう。) |