Freddie Green (gt)


なんでソロをとらないかって?とりたくないからさ。

- Freddie Green -

 まさにベイシーバンドの個性の重要な要素の一つを担った、「ベイシー楽団の至宝」とまで呼ばれた名ギタリスト。ビッグバンドの世界で活躍したギタリストとしては一番知名度が高く、ビッグバンドのギタリストは Freddie Green スタイルか否かというジャンル分けができるほど。

 1911年チャールストンに生まれ、NYで活動していたところをプロデューサー、John Hammond の目にとまり、ベイシー楽団に入団。管楽器の大音量のアンサンブルの中にも決して埋もれることなく強烈な光を放つ天才。ソロはほとんど取らず、黙々とリズムを刻みつづけた。バンドに長く在籍した Al Grey (tb) は「 Freddie Green がいなかったら Count Basie も存在しなかった。」 とまで語っています。

 奏法の特徴としては、まず、モダンジャズ以降あまり使われない俗にピックギターと呼ばれるfホールのアコースティックギター(要はフルアコースティックギターからピックアップを取り除いたもの)をほとんどPAを通さず、生音で弾くこと。次に恐ろしく太い弦(0.16inch〜?)を使用し、弦高も恐ろしく高かったこと。左足を上にして組む彼独特の奏法は彼曰く、「こうすると音がどこまでも遠くへ飛んでいくんだ。」そうです。また、ピッキングは、初期('30〜40年代)の速い曲においては1・3拍をアップ、2・4拍をダウンピッキングで弾いていたりするものの、後年はすべてダウンピッキング。マイクを通さない生音はどんなに大きな会場でもよく聴こえたといいます。 彼の音量はバンドの基準であり、「各プレーヤーが Freddie Green のギターが聞こえる音量で吹く」と、ベイシー楽団の、えもいわれぬ激しくも優しいサウンドが出るのだそうです。

 テンポキープに関してはかなり厳しい人だったらしく、テンポがハシるクセのあったドラマーの Sonny Payne を演奏中につつくため、フレディはいつも長い棒を持ち歩いていたという話も。後年はバンドと常に行動を共にし、他界するその日(1987年3月1日)まで演奏を続けました。作曲家としても有能で、バンドに提供した Corner Pocket はバンドの最重要レパートリーとして初録音から半世紀以上を経た今も愛され続けています。ベイシーの死後はまさに楽団の顔として活躍。スタジオでは管楽器よりも大きな音で録音されているところからも、当時のバンドがいかに彼の人気に依存していたかがわかります。